ほんの少し窓を開けて、カーテンの隙間から外を見た。降りしきる白が、音もなく夜の景色を染めてゆく。肌を刺す冷気に身震いしながら、それでも俺はしばらく、その静けさを眺めていた。
背後で衣擦れの音がして、上から何か柔らかいものを被せられた。三蔵が使っていた毛布だ。
「ごめん、起こした?」
頭を覆う布から顔を出す。薄闇の中で、三蔵がこちらを見ていた。
「寒い。閉めろ」
「あ、うん。ごめん」
俺はすんなりと窓を閉めた。カラカラと音がして、孤独な時間は遠くなる。
三蔵は上半身を起こして、灰皿を引き寄せた。完全に目が覚めてしまったらしい。俺は手近にあったライターを手渡した。三蔵は少し変な顔をした。
三蔵が煙を吐き出す。俺はその様子を、ぼんやりと見ていた。
「……好きなのか」
「……え?」
「雪。積もるらしいな」
俺は一瞬質問の意味を考えて、そのまま答えた。
「……好きじゃない」
そこで何故、と訊いてくるような三蔵じゃない。代わりに、どうした、と問われた。
「人に突っ込んどいて上の空だったじゃねえか」
「……三蔵」
「夜中の考え事なんざロクなもんじゃねえぞ」
三蔵の声に責めるような調子はなく、俺は毛布にくるまっていた。
引き寄せられるように、俺は三蔵と唇を重ねた。三蔵の吸う煙草の味と、三蔵の肌の匂いがする。顔を離すと三蔵はしばらく俺をじっと見て、けれど、何も言わなかった。
三蔵に促されるようにして、一緒の布団に入った。毛布と体温を分け合って、瞼を下ろす。やがて三蔵の寝息が聞こえ始める。ここは温かく、静かではなかった。俺は三蔵を起こさないよう、天井を見てしばらく過ごした。