手袋を外し、獣化した右手と指を絡め合う。鋭く尖ったその爪が、血を欲するように手の甲をえぐる。俺たちは舌を絡め合っている。人のものではない右手が俺を傷付けても、時任は逃げなかった。
「……痛くねえの?」
俺の手の甲についた傷を見ながら、苦々しく時任が言ったのはいつだっただろう。あの時、俺は確か笑ったと思う。
「うーん、まあ、それなりには?」
「だから離せっつってんのに。久保ちゃんマゾなのか?」
「そうかもね。俺は、離したくないから」
ベッドに倒れ込む。時任はつないだままの手を引き寄せると、滲んだ血をペロッと舐めた。
「痛いか?」
「そうね」
俺は正直に答え、時任は目を閉じて甲に、指に、手首に舌を這わせた。甘い仕草だ。
「……もう怖くないんだ?」
散らばった髪。白い頬。湿った唇が、少し赤い。
時任は躊躇わなかった。
「……俺も、離したくないから」
「……うん」
俺たちはこれから、指を絡めて、舌を絡めて、奥深いところで混ざり合う。
たとえひとつには、なれなくても。