煙草を吸っていいか尋ねると、疲労の滲む声で、どうぞ、と返ってくる。ベッドの縁に腰掛け、ライターを擦った。セックスの後の一服は、習慣を超えてほとんど癖だ。まさか八戒の横でこの時間を味わうことになるとは思わなかったが。
背後でベッドが軋んだので、首を振り向かせる。八戒が壁の方へ寝返りを打っていた。
「……大丈夫かよ」
「……ええ、まあ……身体の方は何とか。お陰様で」
他人行儀だ。不自然なくらい。こちらを見もしないその胸中を推し量る。
「ま、おまえすげえ色っぽかったし? 大変だったとこ悪ぃけど、俺的には役得っつーか」
「……僕、貴方に全部見せちゃいましたよ。内臓も、罪も、恋愛も、本当の姿も、……セックスも」
敢えて空気を塗り替えたのを察して、俺は黙る。
八戒はのろのろと身体を起こし、俺と正面から向き合った。すみません悟浄、先に謝ります、と殊勝に聞こえなくもない前置きが入る。
「貴方が好きです。僕と一緒になって下さい」
八戒の目には、驚く程迷いがなかった。極端だ極端だと思ってはいたが。
「……八戒」
「……はい」
「落ち着け」
「落ち着いてます」
俺はそこで、八戒の耳が、淡く染まっていることに気付いた。
「あんなに、……あんな風に愛されて、本気になるなって、そんなの無理ですよ。僕は過去貴方に水をぶっかけた女性に同情します」
そういやそんな話したことあったか。焼肉屋。よく覚えてんな。
「……いや、まあ、……愛せてたんなら、良かったけど」
何とも言えない気持ちのまま素直に零すと、八戒の勢い込んでいた気配が、明らかにトーンダウンした。俺は頭をガシガシ掻きつつ、言葉を探した。
「……んーっと、八戒」
「……はい」
「おまえが俺を好きって言ってくれんのは、別に嫌じゃないっつーか、どっちかっていうと嬉しいっつーか……そういうことなら、俺も考えてみるからよ。ちょっと時間くんね?」
八戒は俺をじっと見ていて、俺の言葉を含み噛み締めるように、頷いた。
「……わかりました」
「……サンキュ」
笑いながら言うと、八戒は眉を下げた。
「……悟浄」
「ん?」
「……助けてくれて、ありがとうございました」
「……おー」