【1day1pict】 お題配布元:1day1pict

007.照れる


 傍らに気配が無いことを悟った瞬間、急速に意識が覚醒する。慌てて目線を動かした先、ツインのもう一方のベッドで、悟浄は腰掛け、こちらを見ていた。
「……八戒?」
 紅い瞳と目が合った瞬間、ほっとしてしまった。どうしようもなく。
「……いなくなっちゃったかと思いました」
「……そこまでクズじゃねーって」
 完全にクスリが抜けたのだろう。苦笑する悟浄の様子は、表面上、いつも通りだった。
「……悪かったな」
 端的な謝罪が、何ともこの人らしい。身体を起こし、彼と向き合った。
「……正直、驚きました。……全然気付かなかったです」
「……だろーな。俺こう見えて演技派だから」
「……そうみたいですね」
「……いや真に受けんなよ」
「……どうして、……って、訊いてもいいですか?」
 言葉に詰まった様子で、悟浄が視線を逸らす。後悔するより一瞬早く、答えが返った。
「……何だろな。際限ないからじゃね?」
 息を呑む。自己分析まで的確だ。悟浄はいつも、自分の中で答えを出している。
 ベッドを出て、一糸纏わぬ姿で、彼の正面に立つ。悟浄は顔色を変えることなく、ひたりと僕をみつめていた。知る前に戻れないことはお互いにわかりきっている。まるでいつかの僕のように、彼もまた、僕に断罪されるのを待っているのだろうか。
「……本当は、貴方のことが、少しだけ怖いです」
「……」
「……どうして貴方は、……どんな僕でも受け入れようとしてくれるんですか?」
 理不尽に彼を責めた僕を、悟浄は責めなかった。悟浄が笑う。あの熱っぽい眼差しで。
「……何でだろうな」
 強く腕を引かれて、唇が重なる。そのまま倒れ込むような形で、悟浄の上に覆い被さった。後頭部をキツく抱かれ、僕も負けじと舌を絡める。お互い主導権を渡す気のない激しいキスに溺れる内に、このままふたり一緒に窒息してしまえればなんて、くだらない白昼夢を見た。
「……っ、あ」
 身震いした僕に、悟浄が目で問い掛ける。
「……すみません、……出てきちゃって、貴方のが」
 悟浄は目を見開き、あからさまに動揺した様子で、口元を手で覆った。
「……悪ィ、……マジで」
「……いえ……」
 一気に面映ゆい空気が流れて、こそばゆくなる。今更こんなことで赤くなる悟浄も、つられて照れている自分も、何だかおかしかった。


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