「……とりあえず、一旦抜くから」
ごく落ち着いた声で言われて、僕は悟浄の背に巻き付けていた腕と、腰に添わせていた脚を、ゆっくりと下ろした。芯の残ったソレが、自分の内側から抜け出ていく切ない感覚。悟浄は身体を起こすと速やかにコンドームを外し、口を縛って、ベッド脇のゴミ箱に捨てた。
「……悟浄、あの」
「平気かよ。……無茶しやがって」
片腕をついてベッドを軋ませ、悟浄は僕を見下ろした。ちょっと呆れたような、普段と変わらない口調に、胸が締め付けられる。
「……もう、おしまいですか?」
媚びたセリフ。物欲しそうな顔をしている自覚もある。悟浄は眉を下げた。
「……いや、キツイだろおまえ」
「……すみません。貴方にとって何も特別なことじゃないのは理解してます。今まで何人もの女性が言ったのと同じことを言っているんだろうとも思います。……ただ、僕としては無理なお願いをしたつもりだったので、……こんなに貴方が優しくしてくれるなんて思ってなくて」
何を言っているんだろう。支離滅裂だ。だけど思っていたのと違ったのも確かだった。自分でも愚かだと思うのに、わがままな気持ちが止められない。
こんな風に抱かれなくても、悟浄が優しいことなら知っている。僕が本当に知りたいのは、きっと、その先だ。
「……別に、女にこんな抱き方しねえよ。勘違いされんのメンドクセェし」
少しの沈黙の後で、悟浄はぽつりと言った。僕は目を見開く。悟浄もはっとしたように視線を逸らし、口元を覆った。
「……それだと、僕には勘違いされてもいいってことになっちゃいますが」
「……だよな。何言ってんだ俺」
正直な悟浄の言葉に、胸がツキリと痛む。けれど同時に悟浄が戸惑っている様子も伝わってきて、うっかり湧き上がりそうになる期待を必死に押し止めた。
抱かれてみて、感じた。悟浄は一度寝たくらいで相手に情を移すような男じゃない。
「……ま、とにかく、仕切り直そーぜ」
ぽんと軽い口調で悟浄が言う。
「……それは……二回目があるってことですか?」
「……イヤ?」
甘ったるい悟浄の声色。今度は僕が戸惑う番だった。それは次で終わりにしようということだろうか。それとも二回目も三回目も四回目もあったりする、セフレって奴だろうか。いずれにせよ、一度だけでもと先に哀願したのは僕だ。断る理由なんかあるはずもない。
その日悟浄は、そのまま僕のベッドで眠った。寝息と共に揺れる背中をみつめながら、次に訪れる夜に、想いを馳せる。