【1day1pict】 お題配布元:1day1pict

049.煙草を吸う


 部屋の扉が開いて、入ってきた八戒とばっちり目が合う。やべ、とは思わなかったけど、あ、見られた、とは思った。八戒はすっかり目を丸くしてる。
「……何してるんですか」
「……何って」
 これのこと?と言って、指に挟んだ煙草を持ち上げる。八戒は何か言いたげに口を開きかけて、けれど何も言わずに、ゆっくり近付いてきてベッドに腰掛けた。
「……三蔵が見たらショック受けますよ?」
 窓辺に立った俺を見上げて、八戒が言う。どう見ても動揺してるのは八戒本人で、それが少しおかしい。
「三蔵知ってるよ」
「……彼は何て」
「『止めはしねえが程々にしとけ』」
「……なるほど」
 俺は開け放した窓の向こうに煙を逃がした。虫の鳴く夜で、風は涼しく、少し欠けた月が頭上を照らしている。澄んでいて、明るい。灰を落とす為に部屋の中に目を戻すと、八戒が変な顔でこっちを見ていた。
「美味しいですか」
「んー、美味い時も普通の時もあるけど。今は結構美味いよ」
「……そうですか」
「八戒もどお?」
 そこでようやく、八戒が笑った。
「貴方に煙草を勧められる日が来るとは思いませんでした」
 白地に金のラインが入ったパッケージから、八戒が一本抜き取る。安いライターで火をつけて煙を吐く仕草は、俺なんかよりずっと様になって見えた。
「八戒吸ってたことあんの?」
「とっくの昔にやめちゃいましたけどね」
「何だよ、人のこと言えねーじゃん」
 それもそうですね、と八戒が苦笑する。
 それから俺たちは、今三蔵と悟浄が入ってきたらどんな顔するんだろうなとか、四人同時に吸ったら煙いからお二人には我慢してもらいましょうかとか好き勝手なことを言い合った。八戒が饒舌で面白くて、俺は笑った。
 密やかな夜が更けていく。


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