「このまま出していい?」
柔らかくて優しい、その声。俺は返事の代わりに、久保ちゃんのを一層深く銜えた。やがて口の中に広がる、苦い液体。舌で受け止めたその味に顔を顰めつつ、屈めていた上体を起こした。
「全部飲んで、時任」
久保ちゃんが、俺の鼻と口を同時に塞いだ。
「お願い」
こんな時でも。
久保ちゃんは、いつもと変わらない顔をしている。
飲まないと息させてもらえないみたいだから、俺は喉を動かした。あっさりと呼吸は許される。今度は親指が、唇の表面をなぞった。
「口開けて?」
要求されるまま、俺は口をあんぐりと開けた。舌を指で弄られて、くぐもった声が漏れる。染み付いた煙草のにおい。久保ちゃんの精液も久保ちゃんの指も、何もかもが苦い。
口の端から垂れた唾液を、久保ちゃんが美味そうに舐め上げた。
「おまえは可愛いね」
「……にげーんだよ」
「うん。ごめんね?」
心にもないことを言う久保ちゃんの声だけが、どろっどろに甘い。