【1day1pict】 お題配布元:1day1pict

349.後悔する


 吹雪の中三蔵と悟空とはぐれ、僕と悟浄は辛くも辿り着いた山小屋にいた。遭難だ。他に暖を取る手段もなく、自然と身を寄せ合う。似たような状況は前にもあったけれど、その時は四人一緒だった。
「……三蔵と悟空は大丈夫でしょうか」
「何とかなってんだろ、あいつらなら。……人の心配より自分らの心配した方がいいんじゃねえの、コレ」
 いつやむのかわからない吹雪。食料等が入った荷物は悟空が持っているはずだった。悟浄の身体の震えが、触れ合った肩から伝わってくる。
「……ヤバくね?」
「……そうですねえ。――こういう時はやっぱり、服を」
「おーヤメとけ八戒。後悔すんぞ」
 殊更大きな声が、僕の言葉を遮った。悟浄は震えを戒めるように、己の肩を強く抱いている。
 悪戯心かもしれないし、案外純粋な疑問だったかもしれなかった。
「……悟浄はするんですか?後悔」
「……ナニその質問」
 ぶっちゃけ僕は、悟浄となら結構何でもアリだ。悟浄とは何がどうなろうと、根本的な関係性が変わることはないという自信があった。それは悟浄という男に対する信頼でもあるし、積み上げてきた自負でもあるのだけれど。
 こんな状況じゃなければ。あるいは、こんな時だからこそ。僕は躊躇いも無く軽口を叩いた。
「とりあえずキスしてみますか?」
「……おい。話が変わってんぞ」
「嫌ではなさそうですね」
「……ま、アレだ。おまえ美人だし?」
「じゃあ三蔵とするのもアリですか?」
「……俺にナニ言わせてえのよ、おまえ」
 低い声のトーンに、呆れが混じる。引き際かな。一度は聴いてみたい気持ちがあったけれど、別にここで終わりという訳じゃない。僕は冗談で収める文句を思案した。
 気付けば僕は、悟浄の下にいた。抵抗する間もなく押し倒され、頭や背を打つことのない配慮は勿論、膝の間にはするりと悟浄の身体が入り込んでいる。その滞りない手際は何とも鮮やかで、さすがとしか言いようがない。
 長い髪が降りかかる。閉じようとして脚に当たった悟浄の腰回りの感触を、強烈に意識した。
「……俺に本気になられて、おまえ後悔しねえの?」
 悟浄は今まで見たことがない顔で僕を見下ろしていて、僕は、目を逸らすことが出来なかった。


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