崖から落ち、凹凸激しい岩肌に手を掛けることが出来たのは、不幸中の幸いだっただろうか。両足を何とか安定させ一息吐いたものの、全く楽観視出来る状況ではなかった。敵と戦う中で三蔵と悟空と引き離され、ジープともはぐれ、崖の上までは数メートルの距離。そして視界の端に悟浄ご自慢の長い脚。僕の斜め上辺りで、悟浄はぶら下がっている。
「悟浄!右足、こっちに引っ掛けて!」
「……おー、サンキュ」
微妙に空いた間を訝しむ。僕が左手を掛けていた少し大きめの突っ張りに悟浄が足を乗せた途端、岩場は脆くも崩れた。
「うおっ!」
「悟浄!」
「っ、八戒!」
「僕は大丈夫です!」
「……万事休すってか?」
端的な軽口が、事態の深刻さを際立たせる。悟浄も僕と同じことを考えている。何とか左手を掛ける場所をみつけたが、さっきより安定が悪い。先に足場を確保していなければ、僕はあのまま落ちていた。そして腕だけで体重を支えている悟浄。長くは、もたない。
「おまえ今日、朝の占い見た?」
「……天気予報だと明後日まで晴れだそうですよ」
「今日の蠍座、ぜってー12位」
二度目の違和感を覚えて、無理矢理首をひねり、悟浄を見上げる。表情なんか見えないのに首を伸ばして、ようやくそれが、視界に入った。
悟浄の左腕が、無い。