【42℃のお題その1】 お題配布元:42℃のお題

33.the ring finger


 テーブルの縁に指をかけた途端走った、鋭い痛み。思わず声を上げたら、食器を片付けていた悟能がすぐそばまで寄ってきた。
「どうしたの」
「棘が刺さったみたい」
「見せて」
 左手の薬指の爪の間に、木の繊維が一本、ぷつりと入り込んでいる。悟能は私の手を掲げると、大真面目な顔でそのささくれを抜き取った。別にこんなの自分で取っても良かったのだけれど、一応私はありがとう、と言った。
「どういたしまして」
 悟能が私の指先にキスをした。その上目遣いや唇の触れさせ方がキザったらしくて、何だかこっちが恥ずかしくなってしまう。
「……知らなかったわ」
「え?」
「そういうことも出来るのね。すごく意外」
 すると悟能はあはは、と声を立てて笑った。
「君にしか出来ないよ」
「……悟能」
「うん?」
「デザートはまだ?」
「はいはい」
 ちょっと待ってて、と言い残して、悟能の背中がキッチンへと消える。
 私は左手をそっと握り締めた。


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