貴方の海に満ちる月
- 41.(2024/12/04)
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悟浄総モテ現パロ続き。
『……シてくれないんですか?』ベッドに座らされた八戒が、悟浄を見上げます。『……泣いてる奴抱くの苦手なんだよ』ぽつりと零した悟浄に、首を傾げる八戒。『僕、泣いてないですよ?』『……』『……別に、大事にする必要なんてありませんよ。はじめてでもないですしね』『……関係ねーだろそれは』寂しげに、八戒が微笑みます。『……貴方が思ってるほど、僕、子どもじゃないんです』『……おまえが思ってるほど大人でもねえのよ』『何でもします。……僕にしてほしいこと、僕にしてみたいこと、ないですか?』妖艶に笑う八戒を、顔色も変えず、みつめる悟浄。『……これが最後って訳でもねえだろーが。ンな思い詰めんな』『未来の話なんてしないで下さい』苦しげに、八戒が悟浄を詰ります。『今じゃなきゃ、意味が無いんです。今じゃなきゃ……ッ』八戒の肩を抱いて、悟浄が唇を塞ぎます。二度目のキス。三度目。唇を濡らしたまま、間近に見た悟浄の瞳の真剣さに、吸い込まれる八戒。『……わかってる』八戒の身体を優しく、けれど抗いがたい力で引き寄せて、その背を掻き抱く悟浄。『……わかってる』その腕の力に押されるように、吐息を漏らす八戒。悟浄の首筋に縋った体温が、やがて、悟浄の肌を濡らします。
「……おまえ、アイツが前にも傷害事件起こしてることは知ってるのか」「……どういうことですか?」表情を固くして、八戒が尋ねます。静かな溜め息を吐く三蔵。そんな三蔵を見遣って、悟空が口を開きます。「……三蔵。俺が話してもいい?」「……好きにしろ」三蔵の言葉を受けて、八戒の方へと、向き直る悟空。「……前にさ、三蔵仕事で逆恨みっていうか、ストーカーみたいな奴につきまとわれて、……ホントにちょっと、危なかったことがあったんだけど。それ、悟浄が助けてさ。……でも、そん時悟浄、相手のことボコボコにしちゃって」「俺が止めなきゃ殺してたんだよ」厳しい声音で、三蔵が口を挟みます。「……許せねェんだと。『そういう』奴が」「……」「……ま、確かにアイツは甘いからな。殺しまではヤらんかもしれん」「……三蔵」何処か遠くを眺めるように、三蔵が言います。「……おまえに、自分の罪背負わせるような真似は、出来ねえかもな」何度目かの沈黙が訪れます。口火を切ったのは、悟空。「……えっ、じゃあさ、悟浄何処行ったんだよ?」「俺が知るかよ」「ってゆーかさ、八戒の為って言って、八戒置いてくのっておかしくね?」「……それはさっき説明しただろうが猿。アイツの目的は、八戒をここに置いていくことだろ」「でもっ!おかしーじゃん!」「……まあな」ふたりのやりとりを前にして、密かに気が咎める八戒。……悟浄は、いきなり僕を置いていった訳じゃない。”逃げるか”と言われたあの時のことは、きっと、墓場まで持って行くべき秘密だ。「……ここで憶測を並べていても埒が明かない。とにかく、悟浄を捜さないと」「……だから、アイツを捜しておまえは、どうするんだ」「……わかりません。でも」真っ直ぐに顔を上げて、八戒がふたりを見返します。「……会いたいんです。悟浄に」
僕一人をベッドで寝かせて、抱き締めて添い寝をすることすら、貴方はしてくれなかった。『……おまえはさ、苦しんで当たり前のことで苦しんで、悲しんで当たり前のことを、悲しんでるだけなんだよ』『……』『……だからさ、……あんま自分のこと、追い詰めんなよ』『……』『……ま、……しょーじき俺にも、よくわかんねえんだけどな』『……悟浄』『ん?』『……あの、……わざとですか?』上目遣いで尋ねても、悟浄は他意もなさそうに僕を見返すだけだったから、僕は仕方なく、内側から悟浄の手を、握り返した。『……あんまり、指、撫でないで下さい』吐息が混ざったことに、気付かない悟浄ではないはずだった。悟浄は軽く目を見張り、それから絡まり合った手を見遣って、笑った。『……ワリ。つい、な』口ではそう言いながら、また僕の背を震わせるような真似をする。その時の僕は、よっぽど恨みがましい目をしていたのだろう。悟浄は心底困ったように、けれど何処か愛おしげに僕を見て、笑っていた。
続く。
たぶん、悲しい夜にしたくなかった。
- 42.(2025/01/11)
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悟浄総モテ現パロ続き。
おまえに平伏したい。しょうがねえ奴だと笑ってほしい。おまえに赦されたいと思うことを、赦してほしい。きっと、おまえが俺に対して望むよりも、ずっと強く。
「……やめておけ」三蔵があっさりと発した言葉に、目を見張った八戒と悟空の視線が集まります。悟浄の残した書き置きを、指先で叩いてみせる三蔵。「……ここに書いてあんだろうが。俺はおまえのことを頼むと言われてんだ。勝手に追われちゃ迷惑なんだよ」困惑を滲ませる悟空。「三蔵、何言ってんだよ?」「……悟浄に言われたから、その通りにするんですか?随分と躾が行き届いてるんですね」八戒の挑発をスルーして、三蔵が言葉を続けます。「……仮に殺しまではヤらねえとしても、アイツが人を半殺しにしようがそれで自分が捕まろうが、それ自体を何とも思ってねえのは確かだからな。アイツに何かヤられる前に自分がヤりてえなら、今すぐここを出て殺しに行きゃあいい。さっきも言ったが、おまえを止められるような筋合いは俺たちには無ェ。……だが、アイツがおまえを置いていった意図を汲んでやる気持ちがあるなら、余計なことは考えずにここにいろ。おまえの生活にかかる金は、俺が預かってる。普通に暮らしてりゃ一年は困らねェよ。その間に、身の振り方でも考えろ」「……やっぱり、悟浄が出て行くこと、知ってたんですね」確信めいた八戒の視線を受けて、三蔵が嫌そうに溜め息を吐きます。「普段はこっちが仕事フらなきゃ寄りつかねえくせに、わざわざ事務所に顔出してな。……自分に何かあったら八戒のことを頼むと、……俺にあの軽い頭下げやがったんだよ」「……」悟空の顔色が変わります。「っ、何だよそれ、気付いてたなら、何でその時に悟浄に訊かないんだよ!?」「八戒の事情が絡んでる以上、アイツは絶対に口を割らねェ。問い詰めるだけ無駄だ。……こうなった時に、本人に訊くしかなかったんだよ」口を噤む悟空を尻目に、あの日のことを、思い起こす三蔵。……あの時、本当に俺に頼みたかったことは、別のことだったはずだ。俺を巻き込むかどうかギリギリまで迷って、結局、やめた。アイツのしそうなことだ。「……貴方の仰る通り、僕の問題と悟浄のことは話が別です。見過ごすことなんか出来ません。……捜しに行きます」「……言っておくが、アイツがおまえの復讐相手に手を下すとしたら、それはおまえの為じゃねえぞ」厳かに、三蔵が言葉を継ぎます。「奴の個人意志だ。……アイツがおまえを止めることが出来ないと判断したのと同じように、アイツを止めることだって、出来やしねえんだよ」……止めようとした。何回も。だが悟浄は出て行った。それがアイツの出した答えだ。八戒を引き留めることを最優先に考えるおまえを、どうすれば引き留めることが出来るのかが、俺には解らなかった。正解があったなら、知っていたなら、どうすれば良かったのか教えてほしい。他の誰でもない、おまえに。「……いくら払えばいいの?」「……あ?」悟空の唐突な問い掛けに、三蔵が眉を寄せます。半ば睨んでいるかのような強い眼差しで、言い放つ悟空。「俺が三蔵に依頼する。悟浄のこと、捜してよ」「……」
おまえに愛撫されたい。こうしている今も。……どーいうお預けなんだ、コレは。
『……おまえ、こーゆーシュミ無いんじゃねェの?』あの日、俺の下で長い髪を散らしながら、悟浄が言った。『……テメエこそ、何平然としてやがる』『……まあー、そりゃあ?男に乗られんのは趣味じゃねぇけど』余裕めかして、何でもないことのように、悟浄が言う。『……すっげえ美人だなと、思ってよ』女でも男でも、俺に羨望や嫉妬や欲を押し付けてくる奴は、掃いて捨てる程いた。その掃いて捨てる程いるような奴らと、おまえが、同じ言葉を口にする。『……責任を取れと言ってんだよ』悟浄の顔から表情が消えるのを、胸が引き絞られるような思いで眺めた。本当は何だって良かった。おまえを俺に繋ぎ止めることが出来るなら、何でも。『……貴様は俺のモンだ。……いいな』悟浄は俺を見て、笑った。何かを諦めたように。それを待ち望んでいたかのように。そして、俺の胸の奥にある全てを、見透かすように。『……はァい』重なる前に、俺を引き寄せたのは悟浄の方だった。俺の強張りを易々と溶かす唇に、俺の知り得ない過去を見る。沈めたいのか、沈みたいのか、自分でも判断がつかなかった。抱く代わりに抱かれるようになったのは、それから半年後だ。
はじめてだった。悟浄が。それは、セックスだけじゃなく。
続く。
- 43.(2025/01/23)
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悟浄総モテ現パロ続き。
「……悟浄。煙草切れた」背中の方から、甘えた鷭里の声がする。俺はベッドにうつぶせになったまま、振り返りもせずに、床を指差した。脱ぎ捨てられた俺の服をまさぐる衣擦れの音、ジッポの音、ハイライトの香り。「……死んでんのかァ?」からかうような物言いに呼ばれて、身体を起こした。ベッドから半身を伸ばして、服の上に放られたパッケージを拾い上げる。「……おめーが下手クソだからケツが痛ェんだよ」「ハハッ。散々喘いでたくせにナニ言ってんだ」聞き流して笑う鷭里に、溜め息を吐く。鷭里は何故か昔から俺を気に入っていて、とりあえずヤらせておけば、機嫌が良かった。「大体よ、ヤられんのが嫌ならオンナんとこ行きゃあいーだろうが。俺ンとこ来たってことは、そーゆーコトだろ?」「……女抱く気分じゃなかったんだよ」「……ふぅーん?」品定めするような目付きをした後で、ニヤリと笑う。「飼い主に捨てられたってか?」「……どーだかな」「今回のは長かったじゃねーの。おまえ好みの美人だったんだろ?」「……ま、美人は美人だけどな。……躾がなってなくてよ。今までで一番ダメな飼い主かもな」三蔵に抱かれるのは、嫌いじゃなかった。単純な経験不足からくる荒っぽさはあったけど、何か優しかったし。ああ見えて。それが何で抱かれる気になったのか、よくわかんねーけど。鷭里は笑みを消して黙っていたが、不意に俺の顎をつかんで、口の中に舌を突っ込んできた。一方的に奪われるのも癪だから舌を絡める。まだ余韻の残る身体が、少し、痺れた。「……ンだよ」口を離した鷭里は、不敵な笑みを浮かべている。「”サミシー”って顔に書いてあっから、慰めてやったんだよ」「……髪食っちまっただろーが。下手クソ」口の中に巻き込まれた髪を吐き出していると、煙草を消した鷭里が、立ち上がる。「なあおまえ、失恋したからって、髪切るなよ」「……ンでよ」「決まってんだろォーが」俺は鷭里を見上げた。セックス中と同じ目で、鷭里は俺を見た。あるいは、俺を金で買ったあの出逢いと、同じ目で。「……そそるんだよ。おまえの髪」
続く。やっと辿り着いた鷭浄。
- 44.(2025/02/17)
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悟浄総モテ現パロ、59。
あの後悟浄は、俺の腕を引っ張り上げて立たせて、玄関の中へと連れ込んだ。時間はもう深夜で、静まりかえった家の中、先に俺を座らせて壁に追い詰めると、俺の脚の間に身体を入れた悟浄が、俺の靴をポイポイと脱がせて、下に放る。暗くて表情がよく見えない。『っ、何』『……見して。俺も出すから』『……は?』膝立ちになった悟浄が自分のベルトに手をかけるのを、信じられない気持ちで眺めた。悟浄は宣言通り前を開いて、性器を取り出す。もう、緩く勃ってる。『……悟空』俺の顔の横に身を寄せて、悟浄が囁く。『……共犯。』『っ』三蔵だって八戒だってまだ起きてるかもしれない、こんなとこみつかったらどうするつもりなんだろう、そんなことを思いながら、俺は自分で、下半身を寛げた。何か硬くなってるソレに、悟浄が触れる。『……デカ』からかうように笑う悟浄の声が、いつも通りで。『……っ、笑うなよ』『……おまえも触って』艶っぽいような、ちょっと甘えるような声で言われて、顔が熱くなる。ねだられるまま触れさせた手の中で、悟浄のが硬く跳ねて、たまらない気持ちになった。悟浄は俺に覆い被さって壁に片手を突くと、俺を包み込んだもう片方の手を滑らせた。『っ、あっ!』『……バカ。声出すな』『……んー……っ!』俺は片手で必死に悟浄にしがみついて、口元を服に押し付けた。だって、こんな。しんとした暗い玄関、俺らの股間の間で鳴るぐちゃぐちゃとした水音、服越しに感じる悟浄の体温、悟浄がいやらしく触ってくれる、俺の真ん中。このどうしようもない快感の一部に、背徳感が無かったと言ったら、きっと、嘘になる。悟浄の肩と胸の間辺りを唾液でぐしゃぐしゃにしてたら、悟浄が壁から手を離して、俺の唇に、人差し指の関節を触れさせた。差し出されたその指を、口いっぱいに銜え込む。苦さを確かめるみたいに舌で舐めたら、悟浄が息を呑んだ気配がした。『……食うなよ?』『……んっ!』悟浄の指が、俺の舌を撫でる。唾液が溢れて、口の端から零れた。……あ。俺。『……ごじょ……っ!』指を吐き出して、潜めた声で、懇願する。悟浄は笑った。『……おまえさ、ちょっとくらい我慢出来ねーの?』俺は悟浄を睨んだ。『……っ、我慢なんか!……俺っ、ずっと……!』『……』悟浄は何故かそこで、俺のモノから手を離した。放り出されて驚いていると、悟浄は代わりに、悟浄のモノを掴んだ俺の手の上から、自分の手を動かした。その手付きの強引さにも驚いて、だけど、俺は握ってただけでほとんど何も出来てないのに、どうして悟浄こんなに勃ってるんだろう、とか思ったら、もう、なされるがまま。『……服捲れ。汚すから』さっきまでの軽さの欠片も無い、低い声で言われて、何をされるか解ってて、俺は胸元まで服を捲り上げた。俺の手を強く握ったまま、俺の手の中で悟浄は射精して、精液が、俺の胸や腹に散る。悟浄が先にイクと思ってなくて、呆然と目の前の光景を眺めてたら、荒く息を吐いた悟浄が、自分の精液が絡んだその手で、もう一度俺の性器を握り込んだ。『んんっ!』後頭部を抱え込まれて、悟浄の方に押し付けられる。熱い。悟浄も、俺も。お互いの体液がぐちゃぐちゃに絡んで混ざり合うのを想像しながら、俺は唇を噛み締める代わりに、悟浄の肩の辺りに、濡れたキスを繰り返した。『……っ、ごじょ……っ!』『……ん。』口元を離して訴えると、悟浄が俺の股間に向けて、頭を沈めた。ウッッッソ。驚きに目を見張る間もなく、悟浄は問答無用で俺の足首を掴んで広げた。いきなり喉奥まで銜え込まれて吸い上げられて、恥ずかしさと、もう寸前だった下半身は止まらなくて、そのまま絶頂まで押し上げられる。出している最中にも舌をいっぱい使ってしゃぶられるのがヤバくて、慌てて口元を手で押さえた。腰が止まらなくて、服を握り締めたまま身を捩る。『やっ、っ、ごじょおっ!』非難を込めて訴えると、悟浄がゆっくり頭を上げた。口を開けて、舌を出して。『……え、飲ん』『それで?』悟浄が俺の内腿に自然に手を滑らせて、俺の片脚を、持ち上げる。『……コレ、ドコまで貰っていーワケ?』『……あ……』食われる。直感的に思って、俺は言葉を失くした。……ああ、そっか。俺、本当に、悟浄が。『……悟浄、……俺』『いーから』その一言で、視界が滲んだ。いつもいつも、俺を甘やかす悟浄に、どうしようもなく胸の奥がほどけて、救われて、どうしようもない。なあ、悟浄。あの頃から俺は、悟浄のモノだよ。バカみたいだって、笑っていーから。俺の額に、悟浄が額を触れさせる。呆れたような、ちょっと投げやりな、どこまでも優しい溜め息。『……危なっかしーんだよ、おまえ』
ずっと悟浄が欲しかった。本当は、全部。
続く。
寸止め(悟浄談)。悟空の内腿を持ち上げてみたくて。因みに「汚すから」は服のことじゃないです。
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