雨はやむし夜は明けるけれど、その事実が僕の心を晴らすことはない。
悟浄とはよく、セックスをする。悟浄というのは雨の中野垂れ死のうとしていた僕を助けてくれた、紅髪の王子様だ。本人いわく経験豊富だそうで、なるほどその手法は丁寧で献身的で、適度に荒っぽい。抱き締める仕草のあまりの甘さに、はじめはぎょっとした程だ。
僕は出来るだけ声を出すようにしている。多少なりとも感じていることを悟浄に伝えたいし、自分を雰囲気に酔わせる目的もある。悟浄が僕の中で出し入れを繰り返す。その規則的なリズムで、絶頂が近いのが解る。僕もそれに合わせて声を出す。あっあっ。悟浄は不意に僕を見ると情熱的なキスをして、指先を絡めた。まるでこれは愛のあるセックスだとでも言いたげだ。僕は目を閉じて喘ぎ続けた。
「……シャワー浴びる?」
身体を投げ出したまま天井をみつめていると、悟浄が声をかけてきた。何気なく聞こえるが、気遣わしげな空気も感じ取れる。ベッドサイドに立つ、鮮やかで優しい男。僕は眼球だけを動かして彼を見上げた。
「一緒に浴びます?」
「ははっ。で、風呂場でもう一発?」
「いいですね」
「……せめーだろ、ウチの風呂場じゃ」
心にもないことを言っている愚かさはやはり伝わるらしく、悟浄は会話を切り上げた。
「煙草」
「ん?」
「吸ってもいいですよ」
悟浄は答えずに、ベッドに浅く腰掛けた。カサカサと音がして、やがて悟浄の肩越しに淡く炎が灯る。
耳障りな雨音は、いつの間にかやんでいた。あと数時間、だましだましやり過ごせば、きっと朝日が昇るだろう。
果たしてそれは希望だろうか。
僕は壁に向けて寝返りを打つと、眠る為ではなく目を閉じた。