置いていきやしない。そんな風に約束してやったのはいつのことだったか。連れ出したばかりの頃は本当にバカでガキで大飯食らいで、騒ぎを起こしては俺の手を煩わせた。まあ今でもバカでガキで大飯食らいなのは相変わらずだが、それでも。
それでももう、あの頃とは違う。
「……三蔵、起きてる?」
旅の宿、二人部屋の一室。悟空が落ち着きなく寝返りを打っているのは、背中越しの気配で感じていた。
「……どうした」
「そっち、行ってもいい?」
振り返ると、こちらをみつめる大きな目と視線が合う。俺は掛けていた布団を少し捲った。
「早くしろ。寒い」
「あ、うん」
悟空はそそくさと自分のベッドを抜け出すと、当たり前のように俺の懐に納まった。
体温が高い。こうして身を寄せ合っていると熱いくらいだ。その熱の塊が、俺の胸元の辺りで、へへ、と笑った。
「何か、すげえ久しぶりだな、三蔵と一緒に寝るの」
久しぶりも何も、元々俺が積極的に招いていた訳じゃない。こいつが来なくなったから、自然とそういう習慣もなくなっただけだ。
「……眠れねえのか」
悟空の背中を緩く抱いたまま尋ねる。茶色い頭がもぞもぞと身じろぎした。
「……三蔵はさ」
「何だ」
「何処にも、行かないよな?」
風の音もしない、静かな夜だった。五百年の孤独がこいつを苛む時間は、以前と比べるとぐっと減ったはずだ。
「……別に何処にも行きやしねえよ」
「……本当に? ずっと?」
「……生憎と俺は不死身じゃねえからな」
金色の丸い目が、俺を見上げた。その目から、たちまち笑みがこぼれる。
「三蔵もうじいちゃんみたいだもんなっ」
「……蹴り出すぞてめえ」
ずっと、なんて淡い響きに縋らせる気にはなれなかった。
願ってやまないのは、きっと自分の方だ。