【音霊】 お題配布元:OSG

037.片付けカチャカチャ


 何かが変わるのかもと思ったけど、少なくとも八戒は変わったようには見えなかった。全然特別なことした訳じゃなくて、一緒にご飯食べたり出掛けたりするのと同じような、当然いつかはすることを、今日したっていう感じ。まあでも、そんなもんなのかなって思う。俺にとっては何もかもハジメテの一大イベントだったとしても、八戒は、多分、違うんだろうし。
 台所に立って、八戒は洗い物をしてる。八戒の作ってくれた料理はどれもこれも美味しくて、だけど何故か、少し物足りなく感じた。
「……俺、何かすることある?」
 待ってるのが落ち着かなくて、八戒の斜め後ろに忍び寄る。八戒は手を止めずに、目線だけをこちらに向けた。
「大丈夫ですよ、もう終わりますから。後でお茶淹れますね」
 すすぎ終えたお皿を、八戒が水切りかごに重ねていく。カチャカチャ。八戒が立てる、日常の音。
「……悟空?」
 背中から、八戒を抱き竦めた。身長差があるから、傍から見たら子どもが懐いてるようにしか見えないかもしれないけど。
「八戒、気持ち良かった?」
「……悟空」
「俺、何かいっぱいいっぱいで……八戒が痛くないようにとか、あんまちゃんと出来なかったかもって」
 基本的にリードしてたのは八戒だ。俺がイク時も八戒上に乗ってたし。色々触ってくれたり舐めてくれたりして、それが気持ち良くて。でも俺は、八戒をイかせてあげることが出来なかった。
「……最初からあんまりがっついちゃうのってどうなのかなー、とか、思ったんですけど」
「え?」
 八戒の濡れた指が、俺の手の甲をなぞる。
「無用の心配でしたね」
 持ち上げられた指先が、八戒の唇に触れた。たったそれだけで、八戒を知った身体がぞわりと震える。肌の気持ちよさ。中の気持ち良さ。吐息と声。それから。
 振り向かせた八戒の目は困ったようなとろけたような目をしてて、俺は吸い寄せられるようにその唇を塞いだ。
「……しよ、八戒」
 いつもと違うあの顔が、何度でも見たい。


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