初めての行為の後、気だるい身体を起こして衣服を身に着けた私に、弟が、大真面目な顔で言った。
「これからは、二人で生きていこう」
白い明かりの下で、悟能は私の両手を握っている。
「悲しいことも辛いことも全部、二人で分け合おう。僕たちはもう、独りじゃないんだ」
まるで苦労を知らないようなキレイな手が、その時はとても、力強かった。
愛し合う前の口説き文句でもなく、睦言でもなく、初夜の直後にこんな風に誓いを立てる彼を、私は微笑ましい気持ちで見返した。この人は本当に無垢で、無知で。
「……もう、独りで苦しまなくていいんだ」
悟能が真っ直ぐに私を見ている。
私は今日この瞬間まで、悟能の前で弱みを見せたことはなかった。彼を信用していなかった訳ではなく、そういう風にしかいられなかったからだ。気丈に振る舞わなければ、そうでなければ、とても今日まで生きてこられなかった。
「花喃。愛してる」
唯一無二の片割れ。けれど何年も離れて暮らしてきた彼に、私の何が解るというのだろう。
「……悟能は馬鹿ね」
苦し紛れに、私は彼を嘲笑った。悟能は笑い返した。それは静かで暗くて、そして酷く、温かかった。
「……馬鹿でもいいよ」
涙の理由は、自分でもよく解らなかった。