【夏のお題】 お題配布元:COUNT TEN.

1.雷雨


 水が地面を叩く音が、瞬く間に辺りに広がる。俺と八戒は、ほとんど同時に窓の外を見た。
「……うわー、すごいですね。窓閉めましょうか」
「頼む」
 窓の近くに立っていた八戒が、外向けに開いた窓をてきぱきと閉じる。密室になってもなお、遠ざかった音の向こうで激しい雨の気配が感じられた。
 悟空の家庭教師だか俺への顔見せだかを終えて、八戒は帰り支度を始めていたところだった。騒ぎすぎて疲れた猿は、既に寝室で寝息を立てている。まあ、夕飯がまだだから腹が減れば起きだすだろうが。
「夕立ですかねえ」
「通り雨だろ。すぐやむんじゃねえのか」
 言ってすぐ、雷鳴が轟いた。地震か事故かと思うような大音響に、さすがの八戒もびくりと肩を揺らす。
「……帰れるかなあ」
 八戒が窓の外を顧みた。風がカタカタと窓枠を揺らす。半袖からすんなりと伸びた、八戒の白い腕。
「……帰らなきゃいいじゃねえか」
「え?」
「寝床なら用意する。俺の部屋で構わんだろう」
 こんな時ばかりきょとんとした顔で、八戒が俺を見返した。
「……はあ。じゃあ、お言葉に甘えて」
 はあじゃねえよ。


■BACK